Web会議が日常になった会社の回線|見落とされがちな「上り」という要素
オンラインでの打ち合わせが、特別なことではなくなりました。取引先との商談も、社内の定例も、採用面接も画面越しに行われる。そんな会社が増えています。この変化は、オフィスの回線に対して、これまでとは違う種類の負荷をかけています。
インターネットには「行き」と「帰り」がある
回線の速度は、しばしば一つの数字で語られます。しかし実際の通信には、二つの方向があります。
外から自分のパソコンへデータが届く方向と、自分のパソコンから外へデータを送り出す方向。前者を下り、後者を上りと呼びます。ウェブサイトを見る、動画を再生する、ファイルをダウンロードする。これらはすべて下りの通信です。
長い間、インターネットの利用は下りに大きく偏っていました。人々はもっぱら受け取る側だったからです。そのため、一般向けのサービスでは下りの速さが強調され、上りはあまり注目されてきませんでした。
Web会議は、上りを使い続ける通信
ところがオンライン会議は、この前提を変えます。
会議中、参加者はカメラの映像と音声を送り出し続けています。相手の映像を受け取ると同時に、自分の映像を送っている。つまり上りと下りの両方を、会議の時間中ずっと使い続けているということです。
さらに、画面共有をすればその映像も送信されます。資料を映しながら説明する場面では、送り出すデータ量はさらに増えます。
「相手の声が途切れる」「映像がカクつく」と言われるとき、原因が自分側の上りにあるというのは、よくある話です。受け取る側の環境ではなく、送り出す側の詰まりが症状として表れているわけです。
会議以外にも上りは使われている
上りを使うのは会議だけではありません。クラウド上のファイル保管サービスへの同期、大きな添付ファイルを付けたメールの送信、業務データのバックアップ。
これらは社員が意識しないところで動いていることも多く、会議と同じ時間帯に重なれば、そのぶん送信の余地が削られます。会議が途切れる原因が、実は裏で走っていたバックアップだった、ということもあり得ます。
人数が増えると、負荷はかけ算になる
会議での通信は、参加人数に応じて増えていきます。
同じ時間に、何人が会議をしているか
一人がオンライン会議をしている状態と、社内の五人が別々の会議に参加している状態では、オフィス全体から送り出されるデータ量がまったく違います。
朝の時間帯に定例会議が重なる、午後に商談が集中する。こうした山が発生する会社では、その時間帯だけ通信が苦しくなります。しかも会議中は、他の社員が普通に業務をしています。メールの送受信も、クラウド上のファイル操作も、同時に走っているのです。
集合住宅向けの環境で法人が使う場合
事務所がビルの一区画にある場合、建物への引き込み方によっては、他の区画と設備を共有している構成になっていることがあります。この場合、同じ建物内の他社の利用状況が、自社の通信に影響することもあり得ます。
夕方になると急に重くなる、特定の曜日だけ調子が悪い。こうした症状が出ているなら、自社の使い方だけでなく、建物の環境も含めて考える必要があります。
会議前提の環境をどう整えるか
上下対称の光回線という前提
光回線は、上りと下りで大きな差が出にくい方式として提供されています。技術的な上限値としては、両方向とも同じ水準が示されているのが一般的です。
もちろん実際の速度は環境によって変わりますが、構造として上りが極端に細くならないという点は、会議を日常的に行う会社にとって重要な前提になります。上りが弱い方式の回線を使い続けたまま会議が増えたのであれば、そこが根本の原因という可能性があります。
無線環境の見直し
意外に効くのが、社内の無線環境です。
回線そのものに余裕があっても、会議の参加者が全員無線でつながっていれば、その手前で詰まることがあります。会議専用のスペースがある会社なら、そこだけ有線でつなげるようにしておくと、安定感がまるで違ってきます。
重要な商談や採用面接など、途切れさせたくない場面で使う席には有線を用意しておく。低コストでできる、実用的な備えです。
会議室の場所と電波の届き方
無線を使う場合、会議室が電波の届きにくい位置にあると、それだけで品質が落ちます。厚い壁の向こう、フロアの端、あるいは金属の多い場所。
オフィスのレイアウトを決めるとき、電波の届き方まで考える会社はあまりありません。しかし会議が業務の中心になった今、会議室の通信環境は執務席と同じくらい重要な条件になっています。
「自分の環境が原因かもしれない」という視点
会議で不調が起きると、多くの人はまずアプリやサービス側を疑います。実際にそちらが原因のこともありますが、他の参加者は問題なく話せているのに自分だけ途切れるのであれば、原因は自社側にあると考えるのが自然です。
社内の複数の席で同じ症状が出るのか、それとも特定の席だけなのか。有線でつなぐと改善するのか。この程度の確認をしておくだけで、相談したときの話が早く進みます。
使い方が変われば、必要な回線も変わる
オンライン会議が増えたということは、オフィスの通信の性質が変わったということです。受け取るだけだった環境から、送り出し続ける環境へ。
数年前に決めた契約のまま、業務の中身だけが変化しているという会社は少なくありません。会議の途切れが日常になっているなら、機器や設定だけでなく、回線そのものを見直す時期に来ているのかもしれません。
