拠点が二つになった日|複数拠点の通信をどう揃えるか

事業が伸びて二つ目の事務所を構えた。営業所を新設した。あるいは店舗を増やした。会社にとって喜ばしい節目ですが、このとき通信環境には新しい課題が生まれます。拠点が一つだったころには考える必要のなかった問題です。

拠点ごとに、別々の契約になりやすい

拠点が増えるときに、通信環境について会社全体で方針を決めている例は多くありません。複数拠点を持つ会社でよくあるのが、拠点ごとに契約がばらばらという状態です。

理由は単純で、拠点を増やすたびに、その場で手配してしまうからです。新しい事務所を開設するとき、担当者はその物件で使えるサービスを探し、比較的早く手配できるものを選びます。本社がどこと契約しているかまで確認する余裕は、なかなかありません。

結果として、本社はA社、二つ目の拠点はB社、三つ目はC社という状態ができあがります。それぞれ単体では問題なく動いているため、不都合に気づくまでに時間がかかります。

気づくのは、たいてい後になってから

ばらばらであることの影響は、じわじわと表れます。

請求書が別々に届き、経理はそれぞれ処理する。契約更新の時期も異なるため、管理表を作らなければ把握できません。拠点から「ネットが遅い」と連絡が来たとき、その拠点がどこと契約しているかを調べるところから始まる。

一つひとつは小さな手間ですが、拠点が増えるほど積み上がっていきます。そして拠点が三つ、四つと増えたころには、全体像を把握している人が社内にいないという状態になりがちです。

揃えることで得られるもの

では、拠点をまたいで契約を揃えると何が変わるのか。効果は日々の管理から業務品質まで、いくつかの層に分かれて表れます。

管理の手間が減る

同じサービスで統一されていれば、請求はまとめられ、契約内容も共通になります。窓口も一つです。

拠点から不調の連絡が来ても、確認する先は毎回同じ。担当者が変わっても引き継ぎやすく、契約書の在り処もはっきりしています。地味な話に聞こえますが、拠点が増えるほど効いてくる差です。

拠点間で同じ品質を保てる

もう一つの利点が、環境の均質さです。

拠点ごとに契約が違えば、通信の条件も違います。本社では快適に動く業務システムが、営業所では重い。オンライン会議をすると、特定の拠点の参加者だけ映像が乱れる。こうした差は、業務の進め方にも影響します。

全国のエリアで同じサービスを利用できるかどうかは、拠点展開を考えている会社にとって前提条件になります。地域によって使えたり使えなかったりすると、そもそも統一という選択肢が取れません。

拠点を増やすときの手間が減る

すでに使っているサービスがあれば、新しい拠点の手配は同じ窓口に依頼するだけで済みます。

見積もりを取り直す必要も、条件を比較し直す必要もありません。拠点開設のたびに発生していた検討作業が、そのまま省けます。出店や増設のペースが速い会社ほど、この差は大きくなります。

拠点によって使い方は違う

揃えるといっても、すべての拠点に同じ規模の環境を用意する必要はありません。二十人が働く本社と、数人が常駐する営業所では、必要な条件が違います。

同じ事業者のもとで、拠点ごとに適したプランを選べる。そういう形が取れれば、無駄をかけずに統一の利点だけを得られます。揃えるべきなのは契約先と管理の仕組みであって、中身まで画一にする必要はないということです。

拠点をつなぐという観点

拠点間でデータをやりとりする場合

複数拠点を持つと、拠点をまたいだやりとりが発生します。共有のファイル、統合された業務システム、拠点間の内線的な通話。

こうした運用では、それぞれの拠点の通信品質が全体に影響します。一つの拠点だけ環境が弱いと、その拠点との連携が全体の足を引っ張ることになります。

外部からの接続が必要な場合

拠点や外出先から社内のシステムにアクセスする仕組みを使っている場合、接続元や接続先を特定できる状態が求められることがあります。

こうした用途では、常に同じアドレスが割り当てられる契約が選択肢に入ります。すべての会社に必要なものではありませんが、業務システムの要件として指定されることがあるため、該当するかどうかは確認しておきたい点です。

統一するタイミングをどう作るか

すでにばらばらになっている場合、一度にすべてを揃えるのは現実的ではないかもしれません。契約の残り期間もそれぞれ違います。

現実的なのは、更新の時期が来た拠点から順に寄せていくという進め方です。そのためにはまず、どの拠点がどこと契約していて、いつ更新なのかを一覧にする必要があります。この棚卸し自体が、実は多くの会社でまだ行われていません。

拠点を増やす前が、いちばん動きやすい

もっとも整理しやすいのは、次の拠点を作る前です。二つ目、三つ目の段階であれば、揃え直す手間はまだ小さくて済みます。

拠点が一つから二つになるとき、多くの会社は「同じようにもう一本引けばいい」と考えます。しかしその瞬間が、通信環境を会社全体としてどう設計するかを考える、最初の機会でもあります。

増やす前に、全体を見る

拠点が増えるということは、管理すべきものが増えるということでもあります。

通信環境については、増えてから整理するよりも、増える前に方針を決めておくほうがはるかに楽です。次の拠点の話が出たときこそ、全体を眺めてみるタイミングだと言えます。